29人が本棚に入れています
本棚に追加
宇宙の缶詰
1.蟹缶を用意して、中身を食べる。
2.ラベルを剥がして、空になった内側に貼り付ける。
3.蓋を閉めて、ハンダ付けする。
「これで『宇宙の缶詰』の出来上がりというわけだ」
ラベルの貼り付けにより、缶の内と外をひっくり返すことで、外側にある全宇宙を缶詰に内包する。それは地球のとある島国の芸術家がつくった、梱包芸術だった。
「人によってはジョークやとんちだと感じるかもしれんがね」
ダイニングテーブルの上に置かれた平べったくのっぺらぼうな缶詰を、ポカンと見つめる助手にウインクを送る。と、助手――シイナは魔女の呪いがとけた姫君のごとく顔をほころばせた。冗談だと理解したらしい。
「『宇宙の缶詰』なんて仰るから、私はてっきりこちらのことかと」
片付けの途中だったのだろう、彼女は抱えていた縦長の缶詰を掲げる。やや大振りな桃缶を彷彿させる形だが、無論、桃缶ではない。手紙や小さな荷物を宇宙空間に射出する輸送ポットだ。『宇宙の缶詰』と聞いたら、まずそちらを指すのが一般的だった。
シイナは出来上がったばかりの『宇宙の缶詰』をまじまじと見つめ、
最初のコメントを投稿しよう!