3人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、どこいくの。裕紀くん」
菜月の言葉を聞いて、思いついた。
行く先をこいつに考えさせることにしよう。裕紀はそう決めると、行き先の選定に入った。
田舎には別で帰る予定なので、函館行きのスーパー北斗は却下。どうせなら果てしなく遠くにぶっとんでみてもいいかもしれない。
その時、視界の端に、稚内行きのスーパー宗谷の発車時刻が見えた。いいじゃないか。道東は行けてもせいぜい網走か釧路だ。いっそ北端を目指してみよう。
裕紀は、菜月に左か右かを選ばせることにした。左を選べば、みどりの窓口で稚内行きの乗車券を買う。右を選んだ時は、新千歳空港行きの快速エアポートに乗る。そして空港に着いた時の選択肢は、札幌に逆戻りするか、飛行機で北海道を出るか。これはいい。行き当たりばったりもいいところだ。
「菜月」
呆けた顔をして発車案内板を見ていた菜月に、話しかける。
「なに、裕紀くん」
「おまえ、左と右、どっちが好きだ」
「右」
少しくらい迷え、ばかやろう。
裕紀は口の中だけでもごもご呟くと、無言で券売機の方へ歩を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!