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「で、どうするの」
どうするもくそもない。裕紀は再び、頭の中で日本地図を広げながら、出発時刻と空席状況を知らせる電光掲示板を見上げた。
裕紀はJALの丘マイラーだった。夏休み時期ということもあり、どの便も混みあっているようだった。ただ、羽田行きは便数が多いだけに、まだ満席には至っていない便もある。まあ、まずは東京に向かってみるのも悪くない。
裕紀は、菜月に、黒か白で選ばせることにした。黒ならば札幌にUターン、白ならば東京行きの航空券を買う。そして菜月はその選択にかかわらず札幌行きの快速に叩き込んで、ハッピーエンドだ。これでみんな幸せになれる。
「菜月」
「はい」
「おまえ、黒と白、どっちがいい」
うーん、と考え込んだ菜月の瞳が閉じられる。裕紀は、形のいい唇が答えを紡ぐのを待った。
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