プロローグ

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プロローグ

 ーー警報音が鳴っている。  ディスプレイからは【WARNING】の黄色い文字が明滅しており、機体からはミシミシと嫌な音を響かせながら機体の胸部装甲が俺を押し潰さんと迫ってくる。  頭部の破損によりカメラを失ったせいで、外の様子を知らせてくれるのはスピーカーからの環境音だけで、その頼りの音でさえ役に立ちそうもない。  先程から拾うのは人の泣き叫ぶ声と何かが崩れていく轟音のみ。  狭っ苦しいコックピットから体制を変えようとして動こうとすれば、同乗者が苦しそうに呻く。  ただでさえ重症なのに二人乗りを想定していない造りのコックピットに押し込まれているのだから、傷がよくなろうはずもない。  カメラが壊れる前の外の様子から、救援も期待できそうにないが、せめてもの救いは【奴等】に見つからず生き埋めになった事くらいだろう。  【奴等】に殺されるくらいならこのまま人間らしく、人間のまま死にたい。同僚の悲惨な死に様を見た後だからか、心底そう思う。  ただし、こいつは違う。最悪、同乗者だけでも助けなければならない。それは軍人である俺の義務でもあるからだ。  ……まあ、まともな軍属じゃないけど。  しかし、結果として……  俺は【彼女】を救うことができなかったんだ。
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