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「まあまあ天野、どっちにしろ状況変わらないんだし、少し落ち着こうぜ」
天野が慌てていると、相対的に俺が冷静になってきたので宥める。
椅子に座らせて深呼吸させてみたが、やはりまだ顔色は冴えない。まあ当たり前だ。
「で、ソルトよ。お前の事だから何か考えがあるんだろ?」
目線だけソルトに向けて問うてみた。
自殺志願者でもあるまいし、こいつは何も考え無しにここに来たわけじゃないだろ。
特に俺を連れてきたならば尚更に。
「まあ、用意ぐらいはしていますよ。ただし、時間が問題なんですよねぇ」
ソルトは心底楽しそうにそう言った、きっとそう言いながらも何時でも使えるようにしているんだろうな。余裕そうだし。
「どの程度でそれは使えるんだ?」
「およそ3時間程度。ちなみに第一陣は後十分で来ます」
詰んでるじゃねえか、ふざけんな。
「数は?」
「敵影は十、先発にしても少し多いですね」
「……ここの駐留軍は?」
「六番隊が二五名ですね。後、二番隊の【彼女】が来ていますよ」
ソルトのその言葉に、俺はピタリと動きを止める。
こいつが言う【彼女】というのが誰か、予想がついてしまったからだ。
「……お前の仕業か?」
「まさか、こんな激戦区に来ると分かっていれば妨害したに決まっているじゃないですか。むしろ知ってから慌てて来たぐらいですよ」
と、なるとあの老害共の仕業か。まったく余計な手間をかけさせてくれるな。
「それじゃあ、少し見物しておくか」
「おや? 飛び出していかないのですか?」
ソルトは意外そうな表情で聞き返す。が、俺としては何故飛び出して行くと思っているのかが不思議だ。
「メリットが無え。俺の出番が無えんならその方がいいに決まってるしな」
「つまり意訳すれば彼女が危機に陥れば出ると、まさに騎士ですねぇ」
ソルトが面白そうに冷やかすが、別にそんな綺麗なもんじゃない。それにどちらかと言えば、俺の都合の方が大きい。
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