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「……はあ、今更避難しても間に合わないわよねぇ、これ」
諦めた様子の天野が、背もたれを前にして椅子に腰かける。
そのまま背もたれに顎をおいて不満か愚痴か、よく分からない台詞を吐いた。
「まあ、そもそも軍に情報をリークしていませんしね。まだ避難すら始まっていない状況ですよ」
シレッとそう言い放つソルトを、天野は横目で睨みつける。
「いや、伝えなさいよ。それでどれだけの人間が助かると思ってるのよ?」
「嫌ですよ。どうして僕が一銭にもならない慈善事業をしなければいけないのですか」
まあ、予想できたことだが、改めて聞くと酷い理由だな。
「それに、言ったところでどうしようもないでしょう。そもそも観測班は非合法の部署ですからね、元々軍に嫌われているのに痛い腹をわざわざ探られたくもありません。仮に認められていても、向こうは情報を握りつぶしますよ。五百近い敵が現れたなんて混乱の元になりこそすれ、プラスには成りえません」
むしろそれを利用して悲劇を演出するだろうな。
見出しは【NMの脅威、悲劇を乗り越え果敢にも立ち向かう人類軍の戦士達】とかだろうか?
「じゃあここはどうするのよ?まさか見捨てるの?」
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