第一話 【第一地区《ファースト》】ーイマノチキュウー

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 ……まあ、【撃墜】とか言ってるけど、実際は意図的であったりする。というか、私闘だったりする。  【勝った方が相手の機体を使える】という条件の元、ペイント弾と模造刀ーー当たり判定を確認するための柄だけの赤外線サーベルーーとはいえ実機を使い戦う、文字通り私闘。  通常ありえない事だが、この基地では大佐公認で認められているようだ。  私はーー半ば騙されたとはいえーーその勝負に乗って相手を倒した。  それも、体術で相手を仕留めた為に相手の機体を損壊させてしまった。  そのせいで機体は爆破炎上。パイロットは事前に脱出装置を使って機体から逃げ出したが、それでも爆発した瞬間にスタンディング・オベーションが起こるこの基地の面々は、流石に頭おかしいと思わざる得ない。  で、貴重な機体を壊して、相手を命の危機に陥れた責で営倉行きーーそれでもまだ軽過ぎるくらいだがーーを覚悟してここに出向いたのだが、肩透かしとかそういう次元じゃない返答が返ってきた。 「そうそう、整備班が喜んでいたぞ。新しい機体が配備されるまで整備する手間が減ったとか何とか」 「何それ怖い。普通そういう所の人達こそ怒るものじゃないんですか?」 「だって整備大変なんだぞ? 私も現役時代に戦場にいた頃は、整備兵がいないから自分で整備しようとして逆に壊しかけたくらいだ」  どれだけ旧式なのよ。今はオートメーション化が進んでいて素人でもマニュアルがあれば簡単な整備ができる機体が基本なのに…… 「まあ、君も知っているだろう? 空と陸では世代に隔たりがあるんだよ。空では化石レベルの技術が、陸では最新技術として活躍している。だからウチとしては空の旧式を配備してもらえるのはありがたいんだよ」 「あー、【常識の隔たり】でしたか」
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