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「以上。空港に置かれている、フリーペーパーの観光案内に書かれた美辞麗句でしたと」
隣にいる相方が読み上げた内容を、俺なりに意訳した感想である。心底どうでもいいが。
「仮にもそれを作った観光案内の人間が、美辞麗句言うのはどうなんよ?」
ため息と呆れを同時に吐き出す。
しかし、カラカラと趣味の悪い笑いを浮かべながら横にいる外道は答えた。
「えー、僕としてはもう少し当時の真実を詰め込みたかったんですけどねぇ。略奪とか、テロとか、利権争いとか」
「やめい、お前はフリーペーパーを歴史書並みの厚みにするつもりか」
「いやいや、語りたい事が多すぎるもので。正直言えば辞典くらいにはしたかったですね」
こいつが言うと本当にやりかねないから困る。どうして観光案内で戦争とテロの再燃と暴動の火種を作らねばならないのか。
今俺達がいるのは人類領【第一地区】。
島中央の空港から一時間程で辿り着く海岸線沿いのアジアンテイストな藁葺き屋根の喫茶店である。
壁は吹き抜けで潮風を大いに楽しめる、いわゆる【趣味店】だ。
実際客層は富裕層くらいのもので、地元民はほとんどいない。いても昼時くらいにしか来ないだろうし、ここの売り上げは常に赤字である。何せ全ての商品が原価割れしているのだから儲かるはずもない。
どうして俺が、そんな店の裏事情を知っているかというと……今俺と話している人間の屑がここのオーナーだったりするからである。
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