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「ですから、最低五百近いNMがこの近海で見つかったんですって。ああ、これ昨日の情報ですよ?念の為に」
平然と理解しがたい事を言い放つソルトに、俺と天野は数秒の間、思考停止。それから数秒して。
「ああ、冗談ですか。やめてくださいよ、そんな洒落にならないこというの。一瞬だけ心臓が止まりかけましたよ」
「ああ、まったく性質の悪い冗談だ。笑えないだろうが」
天野は真顔で、おそらく俺も同じ表情でいただろう事は想像に難くない。しかし、俺達は知っている。
こいつが――
「ざぁぁぁんねぇぇぇんでぇしぃ~た~。これは嘘、偽り無くまぎれもない事実ですぅ~」
こんなに楽しそうに最悪の情報を伝えるときは、絶対、嘘や間違いは言わない。
こいつは外道だが、訳の分からん筋とプライドを持っている。その数少ないプライドにより、こういった負の方面信頼は誰よりも厚い。
曰く、【嫌味は揚げ足取りではいけない】。
曰く、【間違った情報を元に相手を絶望させれば、それは希望になる。そんなクソくだらない結末は許さない。だから絶対に真実を使う。その上で足掻いてくれた方が、面白い】とまあ、そんな最低な理由でこいつは(悪い意味で)信頼できる情報を提供してくれる。
「あ~、私達死んだんですね~。クソみたいな人生でしたね~」
天野が死んだ魚の目でそう呟いた。もう完全に諦めている。
「ノン、ノン、ノン! 諦めたらそこで試合終了ですよ? そんなのはつまゲフンゲフン、弱気な生き方は社長として許しません」
おい、今お前【つまらない】って言おうとしただろ。
「諦めたいんですよ!! これ以上アンタのロクでもない道楽に付き合っていたら身体の前に心が持たないの!!」
天野は半狂乱で涙目になりながら頭を抱えている。
「どうせ諦めるのなら生きる努力をして、やるだけやってから死になさい!! その方が面白い、いや、真っ当な、誰もが認める人間的に王道な結末でしょう!?」
そこにキリッとした真剣な表情でソルトが返す。この腐れ外道が正論と王道とか言うとホントに胡散臭い。
後、今確実に【面白い】ってぬかしたな?
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