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「鳴海……そろそろ出よう」
何を言うのかと身構えていた僕はその言葉に肩透かし。
「えっああ、うん、出ようか」
拍子抜けして素っ頓狂な声を出してしまったけれど何とかそう返事をした僕は帰るための準備をしようと鞄を手元に引き寄せた。
「鳴海」
すると再び消え入りそうな声で篠原先生に呼ばれる。
「俺……結構酔ったかも……」
「えっ大丈夫??立てる??」
そんな様子は全くなかったはずだけど……、もしかすると僕の勘違いなのかもしれない。
そう思い手を差し伸べるけれどその手を取る様子がない。
もしかするとさっきまでは大丈夫だったけど急に酔いが回ってきたのかもしれない。
それは大変だと今度は僕から手を取る。
「無理、嫌だ、帰れない」
しかし篠原先生は俯いて頭を左右に振る。
まるで駄々をこねる子供のような姿に、本当に今日はどうしたのだろうと不思議に思う。
「しの……」
そして篠原先生にもう一度声をかけようとしたとき、篠原先生が何かを呟いたのが聞こえ、慌てて聞き返す。
すると。
「一人じゃ帰れない……鳴海一緒に来て」
上目遣いでコテンと首を傾げた篠原先生のあまりの可愛らしさに僕は息をのんだ。
それと同時に、ようやく気付いた。
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