2 明日あたりはきっと春

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「このまま、いい?」 「いい……。ベッドはあとで」  唇をつけたまま、鼻からも口からも熱い吐息を漏らしながら言葉を交わす。もしもどちらかがメガネをかけていたら、お互いの吐息で確実にレンズが曇っていたんじゃないかな。 「何回すんの?」 「何回でも」  裸に剥いた上半身に舌を這わせ、ちょうど喉仏に噛みつくように唇を押し付けていた時に、「……でも明日、仕事だね」と言いながら、またぷふっと笑うものだから、喉の奥が震えているのが唇に伝わってくる。抱きかかえるようにしたまま、体の向きを180度動かしてヤツを畳に寝かせ、首筋に顔をうずめた。  大学を卒業する寸前に付き合い始めて、社会人になって今年で4年目。この先どーすっかなー、なんて思わなくもないまま時間も季節も過ぎていく中で、2人の間に流れる空気はそれほど変わることもなく、去年のクリスマスにはなぜか、というかついに、指輪の交換をしてしまった。  これがもし、どちらかが女だったら、『ねぇ、そろそろ私たちさぁ……』って話にもなるんだろうけど、あいにくのところ男同士だし、思っていることの全部をべらべらしゃべる性質でもないし。  ただ、1年のはじめに、『今年もいい年でありますように』とかって神様に手を合わせるぐらいなら、お前に願うほうが筋が通ってるような気がするよ。『今年も一緒にいてくれ』って。 「今年だけでいいの? 俺はずーっと一緒にいたいンだけどな」 「……お前、去年もそれ言ってたよな。確か」 「そうだっけ? じゃあ、願いを叶えてくれて、ありがと」  ありがとう……、って言える男なんだよなァ、お前は。  愛してるよ。今年も、これからも、ずっと。  end
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