4 日が暮れてもたぶん、きみと歩いている

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 利明がここへ来るようになってから、シャンプーを変えた。正確に言えば彼の好みに合わせて変えてやった。ボディソープもそうだ。体を洗うタオルだって――    あ。  そんなことよりも。  先週泊まった時に確か、今度大学の授業で使う何かを、ナントカカントカっていうちょっと遠くの店まで探しに行きたいと彼が言っていた。ええと、何だっけ。確か……、  ダメだ。  思い出すのをサッサとやめて、年季の入った浴槽にぐーっと脚を伸ばし自分の記憶力の悪さにぷっと噴き出した。「何か」とか「ナントカカントカ」ばかりで、肝心なところを覚えちゃいない。さっき言われた通り、四十を過ぎて本当に物忘れが始まったのかもしれない。  利明に話したら「はぁ?」と、でっかい口を開けて笑われるんだろうな。  end
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