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壁のむこう
光が見えた。
高度七十万キロメートル。
ここからは水素ガスによる発電に切りかえる。
運動能力があがり、上昇スペードが三倍になった。
風を切ってリールを巻きあげるため、補助としての風力発電も可能だ。
高度八十万キロメートル。
九十万キロメートル。
百万キロメートル。
しかし、油断してはいけない。
もうじき雨が降る時間だ。
わたしは庇の下へもぐりこみ、熱風の排出口で風力発電しながら、降雨がやむのを待った。
そして、わたしは高度百五十万キロに達した。
ここまで来るために、何往復しただろうか?
中途にさげた燃料を少しずつ使いながら往復したのは、この位置にウラン鉱石を置くためだ。
わたしはウラン鉱石の入ったリュックをとると、胸のハッチをひらき、心臓部に鉱石を入れた。入りきらなかった鉱石は背中のリュックに移しかえた。
あと六十万キロメートルだ。
ここをのぼれば、ついに壁を越える。
あの光のもとへ行くことができる。
きっと、そこには新しい世界が待っている。
素晴らしい世界が——
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