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本当は、小説の続きが書きたいのだ。
だが、先ほどから息子は幾度となく夫による寝室防衛線を突破し、ダイニングテーブルの私の足元までやってきている。彼の気が済むように形のいいおでこを撫でていたが、ますます彼は盛り上がるばかりで先に進まない。
致し方がないので、寝かしつけるためにおんぶ紐で背負い上げた。これで座ることも叶わない。
そんなわけで、私はダイニングテーブルの前で立ったままこれを書いている。
背中で息子がうたっている。
うたっている、と言っても息子は1歳半にも満たない。何か意図はあるのだろうが、「ばっぱ、たった、たうたぁばん」「まっま、あうぁいあん」とまったく意味をなさない。
しかし、この世界のことは少しずつわかってきている。
自分の名前はレオくん。眼鏡をかけた人が僕のママ。
お腹がすいたときはパンを食べる。パンは台所の袋の中に入っていて、袋ごと持っていけばママが一本渡してくれる。
喉が渇いたときは、テーブルの上のコップをカンカンすればいい。ママがお茶かミルクを少しだけ入れてくれる。
体の大きい人がパパ、小さい人がねぇね。モフモフしたものは「わんわ」。
不思議なもので、我が家にいるのは2匹とも猫で、彼らは「にゃんにゃ」であると教育したが、何故か「わんわ」と言い出した。これは、5歳の娘の時も同じだ。今では生きとし生ける4足歩行のもの、皆「わんわ」だ。
彼は、私の仕事の都合で生後2ヶ月から保育所生活だ。娘も5ヶ月で預けたし、私の母も(この場合預けられたのは私自身だが)4ヶ月で復職した。
「可愛い時期を見逃すなんて、もったいない」と言われたこともあったが、私はまったくそう思わない。むしろ第1子の娘の時など、要領もわからないから気が狂いそうだった。夜泣きのひどい娘を抱えながら、1日も早く喋るようになってほしいと祈り続けた。私が至らないから、この子は泣くのだ。どうしてこんなに泣くのか、教えてほしいと心から願っていた。
結論から言えば、それは無駄な願いだった。
喋れるようになったところで、ちゃんとした答えなど返ってこなかった。結局、抱っこして揺さぶって、背中とんとんが有効打だと知った。
そうと知れば、今のように泣こうが喚こうがおんぶ紐に収納するようになる。
1時間半の戦いの結果、息子がようやく今、眠りについた。
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