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また失敗しちゃった
「ねえねえ美楽ちゃん! ……新しいパパ、欲しくない?」
朝食の席で母の絵莉から投げかけられたその言葉に、美楽は人生で何度目か分からない深い深いため息をこぼした。
「またか」と。
羽鳥絵莉と美楽の親子は、母一人娘一人のいわゆる母子家庭だ。
父親は、美楽がまだ小さい頃に死んでしまっていた。海外での仕事中、とある過激な宗教団体の起こした事件に巻き込まれて、命を落としたのだという。
以来、絵莉は夜の仕事をしながら女手一つで美楽を育ててきた。
相当な苦労もあっただろうに、愚痴一つこぼさずに自分を育ててくれた母親を、絵莉は尊敬していたけれども……一つだけ、どうしても許容できない欠点があった。
――絵莉は、非常に惚れっぽいのだ。
絵莉が大人しく喪に服していたのは、ほんの数年の間のみ。彼女は次第に、新しい恋人を強く求めるようになっていった。
そしていい男が見つかる度に、美楽にこう尋ねるのだ。「新しいパパ、欲しくない?」と。
最初は美楽も「母も寂しいのだろう」と思い、気を遣って「お母さんが選んだ人ならいいよ」と答えていた。
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