また失敗しちゃった

2/6
前へ
/8ページ
次へ
「はじめまして、美楽ちゃん。早坂と言います。その、お母さんとは……」 「あ、わきまえてますので、お気遣いなく。こんな母ですが、よろしくお願いします」  そして週末、羽鳥親子の自宅マンションに絵莉の新しい恋人がやって来た。  早坂と名乗った男は、美楽の想像よりも大分若かった。恐らくは二十代半ばくらい。歳で言ったら、絵莉よりも美楽と近いだろう。  思春期の娘の新しい父親候補としては、流石に若すぎる。  愛想笑いを浮かべつつ、美楽は早くも暗澹(あんたん)たる気持ちを抱き始めていた。 「早坂さんはね~、消防士さんなのよ! たくましいでしょう?」  そんな娘の気持ちなどお構いなしに、絵莉は見るからに浮かれていた。  確かに、美楽の目から見ても早坂は魅力的な男性に見えた。がっちりとした体格だけどギリギリ暑苦しくはなく、どこかシュッとした雰囲気がある。  顔はやや童顔。白い歯が眩しい、そこそこのハンサムだ。物腰も柔らかい。  けれども、今まで絵莉が家に連れて来た男達だって、そこそこ以上のいい男ばかりだった。  それでもみんな上手くいかなかったのだ。今回だって分かったものではない。  浮かれる母をよそに、美楽の心は氷点下に達しつつあった――。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加