また失敗しちゃった

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「へぇ、絵莉さん達のご先祖はヨーロッパの方から日本へ移住して来たんですか? どうりでどこか顔立ちが西洋人っぽいはずだぁ」 「ええ、ルーマニア辺りの出身だったらしいのよ~。でも、争い事だか何だかで故郷を追われて、日本へ逃げてきたのね~」  夕食の席では、お酒が入ったことも手伝ったのか、絵莉と早坂との間で会話が弾んでいた。  お互いの出身地の話から始まって、今は絵莉達の先祖の話に移ったらしい。  美楽はと言えば、相変わらず愛想笑いを浮かべながら、心を完璧に凍らせていた。アルコールの入った大人を相手にして、楽しいことなど一つも無いのだ。  その後も二人の「楽しいおしゃべり」は続き、気付けば夜の十一時を過ぎてしまっていた。 「あれぇ、もうこんな時間ですか!? いけないいけない。終電の時間もありますから、そろそろお暇しますね?」 「あらぁ早坂さん。別に泊まっていってくれても構わないのよ?」 「ええっ!? でも、それは流石に……」  早坂がチラチラと美楽の方を見る。流石に中学生の娘がいる家に泊まるのは気が引けるらしい。 「あ、私のことはどうぞお構いなく。部屋に鍵もついてますし、特に気になりませんから」 「ほらほら~。美楽ちゃんもこう言ってるから~。泊まっていこうよ~早坂さ~ん」  言いながら、早坂に腕を絡める絵莉。  ちなみに、羽鳥家は2LDKのマンションなので、客が泊まるスペースはリビングくらいにしかない――絵莉と美楽、それぞれの自室以外には。  絵莉としては、早坂を自室に引き込む気満々なのだ。  結局、早坂は泊まっていくことになった。  美楽は手早く風呂を済ませると、リビングでイチャイチャしている二人をよそに自室へと引きこもった。  鍵をかけ、ヘッドホンで音楽を聴きながらベッドに潜り込む。  絵莉が恋人を連れてくると、いつもこうなるのだ。手慣れたものだった。  ――今夜、絵莉は早坂と一線を越える。それはまず間違いない。  しかし、問題はその後だ。過去の恋人達も、こうやって家に招き、夜に一線を越えて……そうして全部駄目になってきたのだ。  果たして、早坂の場合はどうなるのか? (ま、今回も駄目でしょうね)  心の中でそんな呟きを漏らしながら――しかし更に奥底では一縷の望みを持ちながら――美楽はゆっくりと眠りの淵に落ちていった。
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