また失敗しちゃった

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 ――翌朝。美楽は、ヘッドホン越しに聞こえる誰かが扉を叩くドンドンという音で目を覚ました。  机の上の時計を見やると、まだ朝の五時半だ。 「美楽ちゃ~ん! 起きて~!」  ドアの向こうから聞こえるのは、絵莉の声。非常に情けない、助けを求めるようなその声音に、美楽は「またか」と思いながらゆるゆると起き上がると、扉を開けた。  そこには予想通り、なんとも情けない、泣きべそをかいた母親の姿があった。 「美楽ちゃ~ん……また、駄目だった~!」 「……そう」  寝起きの気だるさも手伝ってか、美楽はそっけなく返事をすると、泣きじゃくる絵莉をよそに彼女の寝室へと向かった。  開け放たれたままの扉から様子を窺うと……そこには半裸の早坂が立っていた。  美楽はそのままズカズカと寝室に入るが、早坂は何の反応も示さない。その瞳は虚空を見つめたまま瞬きひとつせず、口はだらしなく半開きになっている。  ――明らかに普通の状態ではなかった。  早坂の首筋を見やると、彼の首の左側には赤黒い傷が二つ穿たれていた。  絵莉が血を吸った痕だ(・・・・・・・・・・)
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