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母が結婚した男には子供がいた。
つまり私に血の繋がらない妹が出来たわけだ。母はそんな彼女を嫌っていた。姉も私も気に入らないと感じた。だから母同様に冷たく当たっていた。
ある日、義父が死んだ。母は気落ちしていた。そんな母を見て私も辛くなった。あの子も一人でひっそりと泣いてた。
そうか。あの子は父親を亡くしたのだと思うと辛くなった。あの子はひとりきりなのだ。
より一層辛く当たる姉と母をよそに私はあの子に優しくなった。彼女たちがあの子に床で眠るように言うと、私はこっそりと布団をかけて枕を渡した。
「ありがとう、お義姉さん。優しいのね」
なるべく優しく、優しくしてやろうと思えた。
ある日、お城の舞踏会に誘われた。王子様、と息を荒くする母や姉たちのことは別としても何かいい出会いがあるかもしれない。私も少し期待した。あの子は置いていかれた。可哀想だと思ったけど仕方ない。だってあの子可愛いもの。
舞踏会は思ったよりも退屈だった。早く帰りたくて仕方なかった。そんな舞踏会にハッとするような美しい人が現れた。何となくあの子に似ていた。
夜が更けて日が昇ってきた頃、ようやく私たちは帰った。それからは再びかわりばえしない日常だった。
あの子はとても美しい。心の綺麗な人だ。きっと外に出ればいくらだって男の人が寄ってくるだろう。外に出なくていいのに。出て欲しくない。ずっとここにいてくれれば。
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