前書き

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 生活が安定しているから、昨年3月から2回リフォーム工事をした。発端は風呂の給湯器が設置から14年が経過し、いつ故障してもおかしくない状態だったので、近くのショールームで見積もりをお願いしたことだった。想定したより高い見積りだったので、インターネットの紹介サービスでリフォーム業者を3社紹介してもらい、見積りを依頼した。最終的に最も安くしてくれた業者に浴室と洗面所とトイレのリフォームを発注した。その工事の品質に夫婦ともに気に入ったので、三ヶ月後、同じ業者に台所や雨戸や雨樋のリフォームをお願いした。この業者の職人さんは本当にプロという感じで、責任をもって自分の役割を果たしてくれた。十年前に外壁塗装の工事を頼んだ業者の職人は、休憩時に玄関近くでタバコを吸って女房を怒らせたが、今回の業者さんはそんなことはなかった。工事に立ち会うのは、女房だから、女房が気にいる会社でよかった。結局、2回の工事で五百万円以上を使った。しかし、これからの人生には必要な出費だったと思う。別に恰好をつける必要はないので、見栄えの部分には金を使わなかったが、生活の質を上げるためにはお金を惜しまなかったつもりだ。すべての工事が終わったのは、11月だった。風呂の工事が終わってから半年経つが、断熱サッシのお陰で風呂が温かいのが嬉しい。雨戸は、枠全体が変形して壊れかけていて開閉と施錠に大変な労力が必要だったので、女房は毎日の煩わしい作業から解放されて喜んでいる。  リフォームが終わってしばらくしてから、私は「千葉の地で死ぬ」覚悟をしたのだと気がついた。自覚していなかったが、リフォーム工事の契約をする時に覚悟したようだ。私の人生はすでに第4クォーターに入っている。人生百年という人たちがいるが、私は人生80年だと考えている。80歳を過ぎた人間に意味のある成果を要求するのは酷だ。80歳までに自分に与えられた使命は果たしておかなければならない。しかし、まだ、私は果たしてはいない。第4クォーターはそれを果たす20年間であり、その環境を整備するためにリフォーム工事が必要だった。
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