前書き

8/29
前へ
/29ページ
次へ
2.会社での生活  岳南建設での勤務は、今年の2月で3年目に突入する。今年4月には3回目の新入社員を受け入れる。200人弱の中小企業なのだが、毎年20人弱の新人を迎え入れている。当社の現場は、山奥にあるので現場宿舎に寝泊まりして仕事する。プライバシーが確保できない住環境で、近くに気晴らしになるような設備もない場所だ。上司と部下の関係も、今ではパワハラと認定されるような行為が残っている職場なので、新人の定着率は悪い。2年前に入った新入社員の3割は辞めた。 私には、ルーティーンワークはほとんどない。だいたい、前任者のいない仕事で、何をすればいいのかよくわからないままスタートした。今でも何をしたらいいのだろうと思うことは多い。たいていは、指示されたことを実施している。いうならば、プロジェクトタイプの仕事をしている。ルーティーンワークとしてあるのは、毎月開かれる安全衛生委員会で報告や提案をすることとOHSAS18001に基づく内部監査と認証審査を計画して実施することぐらいだ。  OHSAS18001というのは多くの人にとっては馴染みがないかもしれないが、労働安全衛生管理を確実に進めて安全で健康的な職場にしていく世界的な仕組みだ。日本での認証取得組織は1700社ぐらいしかなく、品質や環境の仕組みに比べると認知度はそれほど高くない。一言で言えば、「労働者が事故に遭わないように配慮する仕組み」といっていい。労働に起因する死亡者数は、日本では1000人弱だが、世界では毎年230万人にのぼるといわれている。信じられないほど多く、国際的に労働災害を防止する仕組みづくりが求められている。戦争の被害者と同じぐらい多くの人間が毎年死んでいるというのは、私のように安全に関わる仕事をしている人間が常に肝に銘じておかなければならない事実だと思う。一人でも死者を減らして、職場を安全にしていかなければいけない。戦争反対を叫び、戦争は悲惨だという人たちがいるが、労働災害でそれだけ多く死ぬと、戦場よりも職場の方が危険なのではないかと思う。「戦争反対より、労働環境改善」を大きな声で叫んで欲しい。(第二次世界大戦の4年間で、日本の軍人と民間人を合わせて(原爆の被害を含んで)300万人が死んだという。それに比べても、毎年230万人というのはとんでもない数字だということがわかる。)
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加