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舌を吸われ、満足に呼吸もできない息苦しさが、幸也の全身に残る気だるい余韻を更に甘く痺れさせた。
「は、ぁ……」
漸く唇が離れ息も絶え絶えの幸也の髪を、來斗が優しく撫でる。
呼吸が落ち着き、ゆっくりと目を開けた幸也が來斗を捕らえると、髪から手が離れ幸也にかかっていた重さもフッと消えていった。
「……タオル、取ってくる」
そういってソファから立ち上がった來斗がリビングを出ていく。
1人残され、ふと冷静になった瞬間、幸也の中に猛烈な羞恥が沸き起こった。
「~~~~っ」
声にならない声をあげ、両手で顔を覆う。
いっそ転がり回りたかったが、ソファや床を汚してしまいそうで、無音の叫びを続けるに留まった。
気持ちよかった。
違うそうじゃない。
こんなことになるはずじゃなかったのに。
2年ぶりに再会したナンパ男に言い寄られたという話から、なんでこんなことになってしまったのか。
いや、多分、幸也が來斗のスイッチを押すようなことを言ったのだろう。
圧力に負けた結果、変なことををポロッと吐いた記憶はある。
羞恥が態度に出ていた自覚もあるし、來斗を煽ってしまったのだろうとは思う。
過去に2度押し倒されてる以上、來斗の理性が鉄壁でないこと位は理解している。
信じられないのは幸也自身だ。
無理やり抱かれたときと同じで、あの時は男の顔をする來斗を怖いと思っていたのに。
劣情を剥き出しにして、それでも幸也を怖がらせまいとギリギリのところで耐えていた、苦しげな來斗の表情。
あの表情に、幸也は確かに欲情していた。
「ライ兄」ではない「來斗」の瞳に身体が熱くなった。
嫌じゃないどころか、もっと触れて欲しい、と思うなんて。
「うわー……なんだこれ」
今まで沸いたことのない感情が幸也の中をぐるぐると駆け巡る。
タオルを持った來斗が部屋に戻ってきても、幸也は來斗の顔をまともに見ることができなかった。
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