キミが触れる

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街に行くと前にも増して來斗が過保護になった気がしたのはそういうことかと合点がいった。 和雅達がそれを笑っていたのもあの男が理由だったのかと思うと、さっさと言ってくれた方がマシである。 「つーかよ。ライだって2年経っても忘れてなかったわけだし、あの男もそうだって可能性は十分あったろ」 「……ライ兄とあいつは全然違う」 「どこが。幼馴染ったって、ユキを狙ってる男って時点で変わんねぇだろ」 「っ――」 反論しようと口を開きかけた幸也は、キョウを見て動きを止めた。 見つめ合う形になり、キョウが僅かに表情を引き攣らせる。 「何、黙って見られるとか怖ぇんだけど」 「……キョウも男だよな」 「は?何当たり前のこと……なになになにっ」 焦った声を出し、キョウがソファで盛大に仰け反った。 猫がよじ登るような仕草でキョウへと顔を近づけた幸也が、制止するキョウなどお構いなしに鼻先数センチまで距離を詰め瞳を覗きこむ。 冷やかしの声が店内のそこかしこから飛んできた。 「ユキちゃん落ち着け、落ち着いてくれ頼むからっ」 こんな場面、來斗に見られたら流石のキョウでも命が危ない。 少しでも動けば唇が触れそうな近さに、キョウが必死で幸也の肩を押し返した。 眉を寄せて幸也が顔を離す。 「何ともないよなぁ」 「は?」 「こんだけ近くても普通だよなぁと思って」 「そらそうだろ」 やりとりを腹を抱えて笑っていた和雅が涙交じりに幸也の肩を叩く。 ソファへと座り直した幸也の横でキョウが大きく息を吐いた。 「キョウはユキに下心なんて持ってないんだから、近づいたところで危険もないだろ」 「……そっか」 最初から何もないと分かっている相手なのだから、どれだけ密着しても平気なのは当たり前だといえる。 そもそも普段から圧し掛かったり何だりしていて、今更意識も何もない。 あの男は親しくもない上、下心丸出しで近付いてくるから嫌悪を感じるのだ。 「そうなんだよなぁ……あいつとカズ達じゃ違うもんなぁ」 「まぁ、下心っつー点ではライは同類になるけどな」 「だから、ライ兄は違うって」 「どこが?幼馴染なのが?」 どこ。 改めて言われると即答出来る理由を持っていないことに幸也は気付いた。 いくら幼馴染と言っても來斗も男だ、あのナンパ野郎と変わりない。
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