キミが触れる

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街に戻ってきて数ヵ月もすれば、大体の人間と再会を果たし終える。 久しぶりだと喜びあえる人間、再会した途端鬼ごっこを始めることになる人間。 一通りの反応を楽しんだ幸也は2年も経っていたからか、すっかりと忘れていた。 「やぁっと会えたよ黒ねこちゃん。2年もどこ行ってたのさ」 再会どころか姿を見るのも嫌だった奴がいたことを。 「俺ずっと探してたんだよー?」 「そのまま見つけてくれなくて良かったんだけど」 むしろ街からいなくなっていて欲しかった。 嫌悪感を隠しもせず相手を睨み付ける。 今にも殴り掛かりそうな勢いで威嚇してくる幸也に、しかし男は楽しげに目を細めると幸也の後ろにある壁に手を付き、更に身体を密着させた。 ピクリと幸也の肩が跳ねる。 「相変わらずの冷たさ、いいねぇ。2年経ってますます綺麗になったよね、黒ねこちゃん」 「黙れ変態」 この男がどこかのチームにでも所属していれば、遠慮なく殴り飛ばせるのに。 あくまで「一般人」である相手にやたらと手を出すわけにもいかず、けれど壁に追い込まれている現状に、幸也はそろそろ足の1つも出そうなところだった。 「いい加減どけ」 とはいえ、自分からこの男に触れるのは絶対ごめんなので、声で威嚇するだけに留めている。 「せっかくご主人様がいないときに会えたのに放す訳ないじゃん。当たり前の様に黒ねこちゃん独占しててムカつくんだよねぇライって。黒ねこちゃんだって他の男とも遊びたいっしょ?」 「お前とは死んでもない」 2年経ってなお、この男にケツを狙われている現実に幸也は心底寒気を感じた。 本気で気持ち悪い。 「つれないなぁ、心配しなくても俺上手いよ。超気持ち良くしてあげるって」 とうとう幸也の手が出た。 鳩尾に拳を一発当て、男が体勢を崩した隙に壁との間から抜け出す。 「ぐぇっ……容赦ねぇ」 「ちっとも変わらねぇなお前、せっかく忘れてたのに。テク自慢なら他所でやれよ」 街で会う度にナンパしてきたときからこんな調子だったことを思い出した。 あのときはただ男に迫られていること自体が嫌で逃げ回っていたけれど、今日不本意な再会をしてやっぱり嫌だと感じた。
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