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正気に戻ってもらおうと伸ばした幸也の手は、逆に來斗に捕らえられその掌に口付けられる。
「っ……」
捕まれた手はそのままに今度は頬へと唇が落とされた。
触れたまま下へと降りていく來斗の唇が首筋に触れきつく吸い上げられたところで、耐えきれなくなった幸也が來斗の肩を押し返す。
「ち、ちょっと待ってライ兄、」
恥ずかしさで瞑っていた目を開けた幸也はそのまま固まった。
視界に飛び込んできた來斗の表情が、アノ時と全く同じなのだ。
幸也への欲情を隠しもしない、激しく求めるような瞳。
「ま、って……待って、あの」
「……ごめん、触るだけ」
「、ぇ」
「それ以上は何もしない。誓う。ユキに触りたい」
荒くなる息を押し殺した低い声。
苦し気に歪められた來斗の顔を見た瞬間、幸也の鼓動が大きく跳ねた。
何故。
怖かったはずの行為で、何故こんなにもドキドキしているのか。
欲望を剥き出しにしている來斗の顔に見惚れるなんて、あり得なかったのに。
何故、幸也の身体はどんどん熱くなっているのだろう。
來斗を見つめたまま幸也が動けないでいると、再び來斗の顔が幸也の喉元に降りてきた。
熱く濡れた感触に鎖骨の間をなぞられた瞬間、幸也の身体が大きく跳ねる。
「っあ、や、」
感じたことのないゾワゾワとした痺れが幸也を襲う。
服越しに幸也の身体を撫でていた來斗の手が腰のベルトにふれ、乱暴にバックルからベルトを外していった。
「ライ、兄っ……」
性急に下着の中へ入り込んできた來斗の手に自身を握られ、幸也は思わず目を瞑り息を止めた。
全身を甘い痺れが駆け巡る。
同時に、触れられたそこが熱く芯を持っていることに気づかされた。
「や、うそ、」
初めての反応にどうしていいか分からない。
軽く上下に擦られゾクゾクとせり上がる快感に頭が沸騰しそうだった。
「っ……ふ、……」
あられもない声を上げてしまいそうで、幸也がきつく唇を噛みしめる。
微かに感じる痛みでなんとか快感をやり過ごそうとすれば、気づいた來斗が幸也の唇にゆっくりと舌を這わせてきた。
「、」
唇に立てていた歯を舐められ、そのまま歯茎と上唇の間にまで舌が潜り込んでくる。
耐えきれなくなった幸也がふっと噛みしめる力を弛めた瞬間、來斗の舌でこじ開けられた。
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