私は、ものすごいものを見せてもらってるんだろうか……。

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 ある春の日、学校が終わっての下校時、幼馴染のよーこが私に声をかけてくる。 「ねーねー、なつこー。今度一緒にサッカー観に行こうよー」  まただ。よーこは大のサッカーファンでよく全日本サッカー選手権リーグを観戦に行ってる。で、幼馴染の私を勧誘してくる。  でも……。 「えー、やだよ」  と、断っている。サッカーはよくわかんないけど、サポーターなんてなんか怖そうだし。彼女も何かの拍子に口汚いことを口走って暴れてるんだろうかと思うと……。  ともあれ、そんなやりとりを何度もして、その都度断っているけど、ついに根負けして。 「うん、わかった」  と、頷いてしまった。 「ほんと? やったー!」  彼女はまるでシュートを決めたように喜んでいた。  そして当日。日曜日。  試合は午後の1時半に始まる。ということで、少し早めにつくように家を出て。駅まで自転車で行って、そこで待ち合わせして、電車でガタンゴトンと揺られて運ばれて、目的の駅で降りて。そこからシャトルバスで市立陸上競技場まで運ばれて。  電車に乗った時から、青いユニフォーム姿のサポーターが何人かいて。よーこはその人と目が合うたび会釈する。もちろん彼女も青いユニフォーム姿。私はいたって普通の私服だけど、市立陸上競技場が近づくにつれて、なんだか浮いた感じで、思わず固くなってしまった。  だけど、いざ陸上競技場に着けば。場外の広場には屋台村があって、家族連れもたくさんいて、まるでお祭りだった。 「あ、クールフォーのアイス屋さんの屋台もあるの!」  私は駅前にあるクールフォーというアイスクリーム屋さんのアイスが好きでよく食べてて。今日も試合に行く前に、と思ってたけど、なぜかよーこは止めた。  クールフォーの屋台を見てその意味が分かった。  私とよーこは列に並んでバニラアイスを求め、変わらない美味しさに舌鼓を打った。  にわかに太鼓の音がする、声援が響く。  試合前からこんなにハイテンションなんて、私は思わず圧されて足がすくんだ。そんな私の手を引いて、大丈夫だよと、よーこは場内に私を導いた。
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