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「わあ」
思わず声が出た。
そういえば、市立陸上競技場に入るのは久しぶり。ずっと前に市の何かの大会で入ったことがあったけど、よく覚えていない。部活も入っていないからなおさらにここに来る機会はなかった。
中は広かった。古代ローマのコロシアムみたいだと思ってしまった。
……ただ、席は空いてるかな。ブルードラゴンズというクラブがあるのは知ってるけど、たまに忘れるくらいに私にとって存在感はなかった。でもそれは地域全体がそんな感じだったようだ。
確か全日本サッカー選手権リーグの、ディビジョン2っていうんだっけ。少しマイナーになっちゃうようだ。
それでもコアなサポーターたちは声をよく出していた。相手クラブのサポーターさんたちも、離れたところに数十人いた。遠い所からだから、百はいってなさそうだけど、それでも、よく来たなあと感心させられた。
でも、屋台村ではたくさんいるように見えたけど、広い会場内に入ると……。改めてその広さに感心した。
座席に着いて。入るときにもらったパンフレットを開く。今日の試合の意義が書かれて、この街をホームタウンにしているブルードラゴンズの選手一覧があった。
どれどれとそれを見ようとした時に、場内アナウンスがはじまり、スタジアムDJという人が選手を紹介してゆく。
会場の大画面に選手たちの紹介動画が流れて、DJはそれに合わせて選手を紹介する。
「……!」
私はパンフレットと選手紹介を交互に見て、思わず絶句した。
「この人、韓国の人で」
「うん」
「この人は、北朝鮮の代表!?」
「そうだよ」
そうだよって、当たり前のように普通に言ってるんですけど。
パンフレットの選手一覧の顔写真を指差して訊ねて、普通に頷くよーこにも私は思わず絶句した。スマホで検索すれば、なるほど北朝鮮代表の赤いユニフォーム姿での試合の写真があった。
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