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弐
手を引かれるままに入った大広間のテーブルには、所狭しと料理が並べられていた。
「……すごい……」
初めて目にするご馳走の山に呆気に取られていると、どやどやと大勢の声が近づいてくる。
つい、と若旦那が明空の耳元に顔を近づけた。
「大方気のいい連中だけど、ちょいと荒っぽいのも混じってるからね。あたしの側を離れるんじゃないよ」
訳が分からないまま頷いて、明空は若旦那と並んで席に着いた。
ややもせずに姿を見せた『妖怪』たち。
目にした瞬間、明空は出かかった声を息と一緒に呑み込んだ。
テレビで見るデフォルメされたキャラクターなんか比にならない。
人とは全く違う姿形の彼らに、恐怖しながらも目が離せない。
「あんまり見るんじゃない。目を合わせないことだ。猿と一緒だよ」
そう言って、くすりと笑う。
それで少し緊張が緩んだ。
妖怪達から若旦那へと視線を移し、ほっとしながら頷く。
そこへお千がやって来て、蓋付きの椀を明空の前に置いた。
「あんたは取り敢えずこれをお上がんなさい」
そう言って、お千は椀の蓋を取る。
かき玉のあんかけが乗ったうどん。
ほわん、と立ち上った湯気に顔を撫でられて、思わず目を細めた。
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