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それらを、いつ帰ってくるか分からない母親を待ちながら、少しずつ食べる。お金はないから、母親が帰ってくるまであるものだけで食い繋がなければならない。
まずはおにぎりから。次にパン。さらに日持ちのするスナック類は最後の手段。チョコレートは最後の最後。いつの間にかそういう知恵がついていた。
母親は一週間ほどで帰る時もあれば、一ヶ月帰ってこない時もあった。
お腹が満たされると少し余裕が出てきて、大広間をぐるりと見渡す。
最初こそ驚いたものの、そういう動物だとでも思えばそう怖くもない。
……いや、強がった。
やっぱり怖い。
肌が血のように赤かったり、硬そうな毛に覆われていたり、明空なんか一飲みにできそうな大きな口にずらりと尖った歯が並んでいたり。
体の大きなものは一様に恐ろしい顔をしていた。
すると、そのうちの一人がひょいと顔を上げて、今気づいたとばかりに明空を見る。
一つしかない目玉をぎょろりとさせて、「子供がいる」と大きな声を上げた。
食べることに夢中になっていた妖怪達は、ぴたりと動きを止め、一斉に明空に目を向ける。
明空はその無数の視線に体を固くして、膝の上で両手を握りしめた。
「おう、なんだ小僧。なんでここにいる? 」
ぐん、と向かいから身を乗り出して顔を覗き込まれ、思わず「ひっ」と喉の奥から声が漏れる。
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