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猛禽類のような金色の鋭い目に睨まれて何も言えずにいると、つい、と横合いから伸びた手が、相手の額を強かに弾いた。
いわゆるデコピンだ。
「ぎゃっ! 」
さすがの妖怪も眉間を打たれれば痛いらしく、声を上げて額を押さえる。
「な、何しやがる! 」
妖怪の怒声もどこ吹く風で、むしろ睨み返した若旦那が口を開いた。
「大人気なく子供に絡むからだろ。この子はあたしの客だよ。気に入らないならお前さん方が出ていくんだね」
呆れたような口調ながら、眇めた目で妖怪達を睨めつける横顔は奇妙なほど威圧感があった。
「わ、分かったよぅ。そんな怒るなよ、旦那。ちょっと物珍しかっただけじゃねえか」
さっきまでの威勢はどこへやら。
額を摩りながら肩を小さくすると、妖怪は乗り出していた姿勢を戻して大人しく元の席に座り直す。
異形たちの中にあって、着流し姿で額の中心から天に伸びる一本角さえなければ人と変わらない男が、煙管をくるりと回した。
顏つきは精悍。赤銅色の肌と、きりりと吊り上がった太い眉、その下の目は大きくこれも目尻が吊り上がり、瞳は金色。着流し姿でもわかるほど発達した筋肉に覆われた体は見るからに逞しく、体はかなりの大柄だった。
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