まさか女の子と2人で旅行って、

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まさか女の子と2人で旅行って、

次の日、臨時の委員会があった。 図書室にオススメ本コーナーを作るだとかで、来月の委員会までに一人一冊本を読んでポップを作るための感想を書いてくるように、との話だった。 感想記入用紙は記入スペースが広くレポートのようでやる気は失せる。本音を言うと、こんなものを書くくらいならもっと小説を読みたい。こういうことになるから、委員会をやっていると時間を損したような気になる。委員会に入ったほうが大学受験のためにどうとかって言うけれど、僕は進学するつもりは更々ない。だから、正真正銘の自己犠牲的ボランティアだと捉えている。 まぁ、それだと言いすぎかもしれないが。 その点、翠はどうなのだろう。翠は既にタイトル名とその本の作者、出版社を記入していた。 そうか、別に今から読まなくても、今までに読んだ本の中からテキトーに書きやすそうなものを選んで書けばいいか。 書き始めている翠に気づいた拓先輩が急いで言った。 「あ、翠、ちょ、ちょい待って。えっとー、こないだの委員会で海未と翠が処理してくれたあの新刊本、まだ本棚に並べてないけど委員は先に借りてもいいっていう特権があるから、そん中から一冊ずつ感想書いて欲しいんだ。まぁ、感想ってより紹介文みたいのでもオッケ」 そう言われて翠は笑顔のまま、さっきまで書いていた本の説明を消しゴムで一直線に消した。 ほんの少しでも、頑張ったことが無駄になると少なからず不快になるのではないだろうか。 翠は書いたものを直ちに消すことになっても、あれほど楽しげな、清らかな表情をしていたのは なぜなのだろう。
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