新しい朝に新しい夜空

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夏が来た。 夏の夜はつい郵便ポストでも空を仰ぎたくなる。ゆっくりと空を動く星たちを見ていると心が弾む。 星空を楽しんでいると郵便ポストの前に車が止まった。 車から降りた女性の腕の中には赤子がいた。 「新しい夜空だよ」 女性は赤子にそう話して空を見る。 暫くして郵便ポストに歩み寄って葉書を郵便ポストの口に入れた。 宛先は天国の両親。 『お父さんお母さん。寂しさを紛らわせるために私はいつも新しい何かを探していました。お父さんお母さんが心配しないように。でもね、子供が生まれてやっと変わらない毎日もいいなって思えるようになりました。朝は毎日新しいけど、すべてがいつも新しいけど、お父さんお母さんが私をどんな風に見てくれたか、ちょっと分かった気がします。私を生んでくれてありがとう。また、お手紙書きます』 郵便ポストは女性の腕の中の赤子を見やる。 君に似て優しそうな子だねと思うけど、話すことは出来ない。それでも君の新しい葉書を待ってるからと念じる。 空には新しい夜空。 常に新しい夜空。 古い郵便ポストのお腹にはまだまだ届かない葉書がたまりそうだ。 了
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