第1章 初恋

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入学早々にツイてない… そう思いながらゆっくりと起き上がると スっとハンカチが握られた手が僕の顔の目の前に差し出されていた 僕はその手を見たままペコッと頭を下げ ハンカチを受け取って擦ってしまったおでこの血を拭いた すると周りのほとんどの視線が僕に向けられている事を感じ始めた 僕はダサい所を見られ恥ずかしくなって 直ぐにでも立ち去りたかったが それも無理なくらいに視線を集めていた 転んだくらいでこんなにも皆の視線を集められるんだろうか…? そう疑問に思いつつも早く教室に逃げたくなって 僕は立ち上がってハンカチを渡してくれた人にお礼を言おうと顔を見ると 多くの視線を集めていた理由が一瞬で理解出来た… それはさっきまで人集りを集めていた女子生徒が転んだ僕に気付きハンカチを渡してくれていたのだ 咄嗟(とっさ)に僕は「え、あの…ありがとうございます…」と とりあえずお礼を言って立ち去ろうとした しかし 女子生徒が僕の手を掴み 「行っちゃだーめ!君は私と保健室に行くの!」と 言われ多くの痛い視線に囲まれながらも 女子生徒に掴まれた手を引っ張られながら保健室へと連れて行かれた 玄関に入り僕を一旦 待たせて女子生徒は二年の自分の下駄箱で靴を履き替え終わると 再び僕の所にやってきて 「君、お名前は?新入生でしょ?」と女子生徒が聞いてきた 「 はい。新入生の桐生莉太(りた)です…」と僕は少し暗めに返した すると女子生徒は続けて 「私は二年の小池優來(ゆら)!私のせいで怪我させてごめんね…」と女子生徒は明るく名前を言ったかと思えば心配そうな表情で謝ってきた これが 僕と先輩の初めての会話だった… 名前を聞いた先輩は僕の下駄箱を探してくれて 靴を置いてきてくれた そして上履きに履き替えた僕達はそのまま保健室へ向かった 「ここが保健室だよ! 今ちょっと先生が居ないみたいだから、 私が手当てするからそこに座って?」 保健室に着くと先輩は僕を椅子に誘導し 擦りむいてしまった腕とおでこの手当てを始めてくれた まずは、 おでこの手当てだった 手当ての間 先輩の顔がどんどん近くに来るにつれて心拍数がどんどん上がるのがわかった… 僕はこうやって女の人に手当てされた事も近くにいた事も無い…
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