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とめられない
ぼりぼりぼりぼりぼり
「おい」
「ん?」
ぼりぼりぼりぼりぼり
「お前、腕掻きすぎだろ」
「かゆいんだよ……蚊に刺されたっぽい」
ソファから身体を起こした彼が近づいてくる。
「あーあー、ミミズ腫れになってんじゃねぇか」
「だって我慢できないだろ!」
ぼりぼりぼりぼりぼり
「こら、痕残るぞ」
突然手首を掴まれた。もう一方の手で掻こうとしたら、その腕まで捕らわれる。
「離せよ!」
「掻かないほうが早く治まるんだよ。薬ないんだから我慢しろ」
身をよじると頭上に腕を持ち上げられた。俺が掻いたところをじっと検分しているようだ。眉間にしわを寄せている。顔が、近い。だが、俺は今それどころじゃない。
「かゆいかゆいかゆい!」
「じっとしてろって」
「無理無理無理!」
うううう、と唸っても離してもらえない。かゆい。かゆすぎる。皮膚の内側から小さい針でちくちくと刺されているような痺れがどんどん広がる。思うように身体を操ることができないもどかしさに涙が目に浮かぶ。
「なあっ……もう無理!」
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