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市場都市アゴラ
「神の眼さまッ! 神の眼さまッ!」
一組の夫婦がそう叫んだ。彼女たちの前にあるのは、巨大なレンズのような球体。ぎょろぎょろと蠢いて、中に取り付けられたセンサーが動いている。
「果たしていか程でしょうか。わが子は、いか程でしょうか」
大きな機械の眼の視線は、夫婦の間に立つ、少年へと向けられた。レンズの中のカメラは縮小と拡大を繰り返し、角度を変え、水晶体も、光彩も幾重にも取り替えて、その少年を見定めていく。
「ソノ少年ノ価値ハ、『十三万五七八九ウェート』デアル」
神の眼と呼ばれた機械が、プラスチックのような声で告げる。夫婦はその答えに安心したように、息を吐いた。
審査官の『ミドルマン』は、見慣れた光景を、今日も背後から見ていた。此処は、市場都市『アゴラ』の中心に聳え立つ『テスト四六の塔』の最上階だ。
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