遅めになった挨拶周り

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このところ、寒い日々が続いている。 冬の季節が運んできた、凍り付くような冷たい風が空気を冷やし、ここ一帯を天然の冷蔵庫に近い環境を作り出している。 顔を上に上げると、雲一つない空のてっぺんに白く輝く太陽が鎮座していた。 あらゆるものを暖める光を地上に投げかけているというのに、身を切るような寒気のベールが天空からの熱をすべて覆い尽くしている。 地上のあらゆるものを総なめにし吹き飛ばしていく、山から強く吹き付けてくる颪風は今は無く。 辺りは冬でも活動する生物の気配はおろか、ヒトが放つ賑やかな生活音の欠片も感じられない程静まり返っている。 そんな寒空の下、新年の挨拶回りという名目で私はバッグを肩に担ぎ歩き回っていた。 色々とあった一年を振り返りつつ年を越し、無事に新年の朝を迎えて少し経った頃。 新年特有の忙しなさが落ち着き、いつもの静けさを取り戻した日常の中。 私は常から心の内に思い浮かんだ計画を今こそ実行に移すべく、厚手の服を着こみ、準備もそこそこに外出したのである。 日頃からお世話になっている方々に感謝の念を捧げると共に、これからも良好な関係を続けていく為の挨拶周りをまだしていない。 新年の三が日には外せない事情もあって出来なかったけれど、今なら挨拶周りができる。 場所によっては新年の挨拶周りができる日は一月七日から十五日までと様々だけど、まだ間に合うはず。 昨年より大変お世話になった所…いわゆる神社仏閣へ初詣に行って来よう。 目的地は複数回る予定であるため、目的地を効率よく回れるルートはちゃんと決めている。 そうこうしているうちに、そろそろ最初の目的地のとある神社に着くころである。 神社周辺に植わっている、一月に咲く蝋梅の黄色い花から放たれる、ほんのりと甘づいた心地よい香りが遠く離れたこちらへと運ばれてくる。 今年も恙無く暮らせる良い年になりますように。 では、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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