静かなる闘い

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　裕子はなんとなく想像ができた。ざわついてて聞こえなかったか、何か別のことを考えてて聞き漏らしたかで、もし、わかっていながら帰ろうとしたなら悪いのは自分だから、キレたりはしないはずだ。嘘をついた、逃げたと疑われ、我慢ならなかったに違いない。
　誠也は同じ居残りのクラスメイトがいる教室で、逃げようしたずるいやつと決めつけられ、いいわけをしたうえにあばれたやつになったのだ。そして高野に力いっぱい押さえつけられ、大声で怒鳴られているのだから、きっと耐えがたい屈辱だっただろう。高野の大声に負けないよう泣き続けるのが精いっぱいの抵抗ともとれる。
　家でもかーっとなると、ものを投げたり壊したりと、ものにあたる。誰かを傷つけなくてよかった、机でよかった、近くに誰もいなくてよかったと裕子は心から思った。