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 裕子は息子の誠也が5年生になり、新しいクラス、新しい先生になっても特に変わりなく毎日を過ごしているようでよかったと思っていた。  家ではわけのわからない怒りにまかせ、わめいたり泣いたりはずいぶん減ってきていた。自分が正しいという主張も前ほどではなくなっていたので、学校ではより普通にやれているだろうと。家でのわがままとしか思えない自己主張をそのまま学校でやってはいないだろうと裕子はのんきに考えていた。  誠也の性格による面倒やもめ事の一端は1年から4年までの二者懇談や、成績表風の子どもの到達度判定と毎学期担任によって書き込まれる『きみの姿』の中に垣間見ることはできた。  けれど、そのことで先生から強く注意を受けることもなかったし、運動はダメだが勉強で困るようなこともなかったので、担任教師から電話をもらうまでは長男のことを裕子はさほど心配はしていなかったのである。
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