1

3/13
前へ
/212ページ
次へ
「はい」  夕飯の準備をしていた裕子は電話をとった。 「山田誠也さんのお宅ですか」 「そうですが」 「担任の高野です」 「あっ、はい、いつもお世話になってます」  なんの話なのだろう。家にまで電話をしてくる用事があったのかと裕子は思った。子どもたちがほぼ毎日書く『毎日ノート』という予定帳兼日記ノートが先生と子どもを往復していて、親への連絡欄もある。そこに書けば伝わるのに、電話をしてきたのである。 「お母さん、今日のこと聞いてますか」 「えっ」 「今日、放課後リコーダーの再テストをするので誠也さんに残るように言いました。それなのに、残っていない。帰って行く誠也さんを見つけ、教室に戻るように言ったんです」 「はぁ」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加