第1章 scine 1 故郷

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極めて事務的に、俺は言い放った。 「えっ、あっ、そうか。銀行とか? さすがせんせー。やるじゃん。スケールが違うなー!」 そう言いながら、スーツケースの取っ手を固く握ったまま離さない。 「これ。離しなさい。危険だから!」 「いやいや、金ないって言ってるでしょ、さっきから。人助けだと思ってさ」  口調からさっきまでの馴れ馴れしさが消え去って、暴力的なニュアンスが見え隠れする。 「駄目だ。すぐに逃げないと、奴らが来る――」  対峙する彼の視線が、唐突に俺の背後で固まる。 「誰だてめぇ」  振り返ると、そこには少女がいた。全く気配を感じなかった。鮮やかな黒いショートヘアは風に小さく揺れており、小柄で華奢な身体は、黒と灰色のモビルスーツのような装備に包まれている。  静かに佇む、アーモンド型の大きな目。空洞のように無機質に結んだ口が、小さく開いて何かを発した。 「えっ。なんだ? 聞こえねー」  ぼそりと呟いた声は、アラームに掻き消されて届かない。  もう一度口が開いたので、苛立った彼は、少女に近づいて聞き耳を立てた。 「・・・・・・小便小僧? そんなもんねーよ、ここに――」  少女が脇に手をかけた瞬間、何かが太陽に重なり、宙を舞った。     
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