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第1章 scene 4 警護
目を覚ますと、少女がいたタオルケットはもぬけの殻だった。
触ってみる。若干暖かさが残っていた。筋肉痛が残る右腕をぎこちなく回しながら、辺りを見回す。ガラス戸から柔らかな朝日が差し込んでいて、奥の方から水が弾けるような音が微かに鼓膜を揺らした。
薄い氷の上でも歩くかのように、気配を殺して音の方へと近づいてみると、そこにも抜け殻があった。モビルスーツ。風呂場と思わしき扉の中から、暖かな湯気の香りが立ち込めていた。
「お年頃の女子とはいえ、こんな時に朝シャンとは。ずいぶん・・・・・・呑気なんだな。宇宙人さんよ」
濡れた髪をタオルで拭きながら、少女は瞳をじろりとこちらに向ける。
「臭いのは嫌いだ。お前も入れ」
「いやいや。いいよ。どうせ今日には八つ裂きにされるんだろう?」
「いいから入れ」
「勘弁してくれよ・・・・・・時間が・・・・・・」
風呂の前で暫しの押し問答が続いた上、強制的に身を清めさせられることに。マランってやつはこんなに潔癖・・・・・・綺麗好きだったのか。知らなかった。
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