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あたらしい わたし
眩しさに目が覚めた。
鼻先を布団から出すと、冷え切った空気が目の下から喉を通って腹までやってくる。
カーテンの向こう側が明るい。
冬の日差しがこれだけ強いという事は結構な時間のはずだ。少なくとも、朝と言える時間ではないだろう。
仕方がない。
アルバイトが終わって、帰ってきたときには日付を超えていたのだ。布団に入った記憶もないくらいだから、目覚まし時計をセットしていないのも無理はない。
「無理もないけど、それにしたってね」
自嘲してしまった。
欲望に素直に生きすぎではなかろうか。
「さて……と。起きるとしますか」
布団から手がはみ出ないように、もそもそと動いて目覚まし時計を手繰り寄せた。
私は時計を見た瞬間に顔をしかめた。
電池が切れてしまったのだろうか。
耳を当てると、カチコチと鋲を刻む音がしっかりと聞こえてきた。
時刻は七時。
もう一度、窓の方を見るが、冬の朝とは思えない、強い光がカーテンの模様をくっきりと浮かび上がらせている。
冬の朝はこんなに明るかっただろうか。
まるで真夏の日差しから温度だけを奪ったような光だ。
「まさか」
毛布を体に巻きつけ、私は起き上がることにした。
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