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彼女は飼い猫で、共犯者で、残飯処理係だ。
なあごと鳴いて、暗黒街の路地裏をキレイキレイになめてくれている。俺は殺し屋。人の命を食い物にして生きている。彼女、ハスラー・ザ・キャットはその残飯を漁っている。白いワンピースに華奢な少女の輪郭。普段は天使みたく笑ってくれるけど、食事時に見せる妖しい獣の微笑みの方が見ていて心地いい。
どういう仕組みになっているのか、ハスラーは自分の体積より大きな男を食い尽くしていく。いや、これほど細かい肉塊になってはそうも言えない。食い終わった時のハスラーのフォルムはほとんど変化しない。いつみても不思議だ。
「きゅっふい」
食べた食べた、と言わんばかりに変な声をあげる。ハスラーは白い尻尾を立ててぶるぶると身をふるわせた。まわりのくすんだ煉瓦に赤い血が飛散する。
ハスラーは愛しげに白毛に覆われた手をなめなめと手入れする。鉄の爪より凶器めいた爪先は肉片が爪の隙間に入り込んでいる。それをかみかみと爪垢でも味わうようにハスラーは掃除する。
「ねえハニー」
甘ったるい声に上目遣い、ハスラーは挑発するように俺を見上げてくる。
「そんなに見つめないでよ」
ハスラー・ザ・キャットは天真爛漫にはにかみ笑った。
パセリたっぷりのパスタを食べた後みたく、汚れた歯をにっと隠さず。ひしゃげた弾丸を見せつけられた。
――断わっておくが、俺は彼女が人を殺しているところを見たことがない。
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