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ハスラーと出逢ったのは一年前の秋だ。
はじめは不運な少女だと思った。余計な場面に出くわしてしまったのだ。かといって口封じすることのことでもない。変装はしていたし、どうせこの街ではよくあることだ。さっさと立ち去ろうとすると、彼女はこう訪ねてきた。
「これ食べてもいいかな?」
理解しがたい言葉だった。そのまま立ち去ろうとしたら、また訪ねてきた。
「これ食ってもいいかな? ねえ?」
「好きにしろ」
不気味だ。さっさとどこかへ行ってしまおう。その足を止めさせたのは猟奇的な人体音楽だった。弾丸一発で仕留めた死体は形を留めていて、飯が食えなくなるほど生理的嫌悪は感じさせない。が、そんな俺に吐き気を催させるほど醜悪な惨状がそこにあった。発作的に鉛玉を吐き出さなかったのは、ハスラーが心底うれしそうに笑ってたからだ。
なんとなく、フィアに似ているな、と思った。俺が一番好きだった女だ。
以来、腐れ縁がつづいている。
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