非凡な日常

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話が脱線したけど、とにかく、俺が言いたいのは「一般クラスにはまともに視える人がいない」ってことだ。 「視る」ことしかできない俺は陰陽師にはなれない。だから、一般クラスに振り分けられてしまったわけなのだけれど、運が悪いことに、俺の代の一般クラスで視える人は俺だけしかいないらしい。 ……だから、皆、俺の肩の上の存在に気が付かない。 未だに頭を机に突っ伏した状態で、俺の肩に居座り続ける諸悪の根源を憎々しげに見上げた。 小さく、愛くるしい姿をしている一匹の真っ白な「梟」を。 夜には大きく開かれる金色の眼を、今は眠たそうに瞼をぴったりと閉じて寝息をたてている。 ああ、いつ見ても可愛いんだよなぁ…… ……ってそうじゃない! 一瞬ニヤけてしまいそうになった表情を慌ててもとに戻すと、この異常な眠気の原因をどうにか引き剥がそうとして、手に掴もうとする。 ……が、いつもの様に、一瞬掴んだ感覚がしたと思えば、俺の手は文字通り空を掴んだように梟の体をすり抜けてしまう。 思念体とはいえ、既に認識されているというのに、その身体を掴めないようにさせる。そんな芸当ができるなんて、見た目とは裏腹に一体どれほど力を持っているのか……。 思念体は、視られてその存在が明らかにならないと触れられない、そんな不思議な存在だ。 だから、視えない人たちは思念体を持つ神様や妖怪の類いの身体をいとも簡単にすり抜けてしまう。俺にはそれが羨ましい。 そう、「視えない人は触れない」ということは、逆に「視える人は触ってしまう」ということだ。 基本、俺もそうだけど、視える人は思念体に触れないように避けて歩く。 思念体は認知されることが少ないからか、ほぼ全員が何らかの刺激を求めている。そんな奴らに触ってしまうことは、相手方に俺が視えることを知らせるようなものだ。 ついうっかり触ってしまえば、まず、奴らが満足するまで離してくれない。 それでも、敢えて彼らを避けて通っているのがバレてしまえば面倒事が起こってしまうのはほぼ確定なわけだけども。 ……そう考えると、この梟も非常に厄介な面倒事の一つだと思う。
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