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「やっと死ねる……」
「来世はもっと幸せな人に……━━━」
私は首を吊ろうとした。
ちょっと高い台の上に立って、縄を手に取ればいいだけ。それでちょっと苦しめばいいだけ。それだけなのだ。
それだけで一瞬であの世に行けるのだから……、
「待ってよ!! 」
声がした。
男の声だけれど、少し高くて可愛げのある声。
でも、誰が?
私は急いで台から降りて周りを見渡した。
しかし私の部屋には誰もいない。
当たり前だ。
だって、誰かの目に映る訳にはいかないのだから。
1人になれるこの部屋で、私は孤独死するのだと決めたのだ。
誰かいては逆に困る……。
「……はは。もしかして、誰かに止めて欲しくてついに幻聴でも聞こえちゃったのかな」
私はもう一度台の上に立とうとした。
その時、
「―――咲希(さき)っ! 」
私の名前を呼ぶ声が。
そして、その後すぐに小さい何かが私の胸に飛び込んできた。
「おうふっ! 」
サイズはもう、電気を消す時に使うリモコンくらいに小さいのだけれど、それにはなんというか重みがあって、私はその勢いでそのまま転倒した。
「いたたたた……何……、何なの……」
思わず流れで痛いと言ってしまったが、実は下はカーペットなので、それほど痛くはない。
「咲希っ! よかった! 無事なんだね!」
目の前の何かは急に私を抱きしめた。
そういえばさっきはほんとにリモコンのサイズくらいに小さかったのに、何故か今目の前にいるのは背の高い……、いやむしろ私より背の高い……人間?
男……
「―――え、」
「誰? 」
目の前には黒髪で眼鏡を装着し、キリッとした顔立ちをしている―――いわゆるイケメンがいた。
しかも全裸の。
「え、誰!? 変態!? マジ誰!? 泥棒!? ぎゃあー!! 」
いや私はこれから死のうとしていたんだ。
本来は、今更泥棒が入ろうが殺人鬼が入ろうが関係ないです、好きにやっちゃってくださいって感じなのだが、こうして目の前に知らない男がいるとなるともう驚かずにはいられない。
これははっきり言って……、恐怖だ。
「咲希、落ち着いて、」
「落ち着いていられるかああ!! 誰だよまずは服を着ろよー!! 」
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