序章

10/12
前へ
/506ページ
次へ
「嫌だ。おれは、おれだけは姉貴のそばに――」 「ジューク。いい加減しろ。聞き分けるんだっ」  父グランドが叱りつけてきた。 「セレナ。グランドも頭ごなしはよしなよ。少し説明してあげるべきだ」  叔父ロークワゴン・ダイヤクロウが、ジュークを正面から見つめた。  叔父は一本のマッチをおれの前に差しだしてきた。 「ジューク。これ、何かわかるかい?」 「マッチに……きまってんじゃん」 「そうだね。じゃあ、これに魔法で火を点けてごらん。ただし、僕の顔を焼かないようにだ」 「できたら、アルトと学校に通える?」 「いいとも。僕が許可するよ。僕の学校だからね」  姉と一緒に……っ。ジュークは、マッチに手をかざした。  やがて、その手はいつの間にか拳に変わり、ついには人差し指だけをマッチに近づけて、さらにもう一方の手でその手首を掴んで支えた。
/506ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加