序章

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 いつの間にか呼吸が乱れ、額に汗が()き出しても、ジュークはマッチに火をつけられなかった。  ロークワゴンは、満足そうに頷いた。 「うん。良いんだよ、ジューク。きみは、このマッチに小さな火を点けることを目的にしながら、でも頭に浮かんでいる情景は焚き火の火だったろう? それが魔法という魔物の正体だ」 「魔法が、魔物?」    「そう。魔法は魔物なんだ。影も形もない所にいて、僕たち魔法使いが呼び出して使う、魔物だ。  アルトは、元々それを呼び出せない。マナがないからね。  だけど、【両双家】――竜の魔術師である以上は、彼女にもこの魔物を(あやつ)ってもらわなくてはならない。  きみは、その逆なんだよ。ジューク。
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