第1章 マナゼロ優等生

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 床の化粧大理石を鉄靴(てっか)で打ち砕かんばかりに踏み進み、全身のプレートがガシャガシャと主の怒りを(あお)り立てた。 (こんな理不尽が、あってたまるかっ!)  レイヴンハート公爵グランドは、怒っていた。 〝血塗られ公〟と呼ばれ、西方世界に英傑あり、王国ダリア執政に豪腕ありと(おそ)れられた自分が、これほどの屈辱(くつじょく)を味わうなど、許されなかった。  グランドは、左手の羊皮紙を強く握りしめて、近づいてくる扉を(にら)みつけた。 「マーチンっ。扉を開けろ。ノックはいらん!」 
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