第1章 マナゼロ優等生

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「はい。人払いできたよ。一応、用件を聞こうか」  グランドは胸一杯に大きく息を吸って、ドラゴンブレスのごとく吐き出した。 「おれの娘を、アルトを国立枢機院へ推挙(すいきょ)しないとは、どういうことだ!」  いまだ羊皮紙を握ったままの拳で執務机を叩いた。  ガントレットをしたままなので、机の書類とインク瓶が跳びあがった。   ロークワゴンは、短い腕と小さい体を伸ばし、なんとかインク瓶の底を受け止めた。 「ふぅ。グランド、勘弁してよ。僕の今朝から五時間の努力をゴミにする気かい。彼女と、話は?」 「むっ。今、国境から帰ってきたばかりだ。夜にするっ。だがその前に、お前の了見を聞きたい」
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