第1章 マナゼロ優等生

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 それから執務室は少しの間、静寂(せいじゃく)が支配した。  グランドは左右の(ひざ)に両(ひじ)をのせて頭を抱え、押し黙っている。  ロークワゴンはその間、机の事務を粛々とこなしていった。  二人の沈黙が破られたのは、外からお茶を持った秘書が叩いた扉のノック音だった。 「失礼いたします」 「休憩中にごめんね。パレット。ちょうど(のど)(かわ)いていたところだよ。  グランド。パレット特製のハーブティが来たから、少し気持ちを切り替えようじゃないか」 「なあ、ローク……あれは、レイヴンハートなんだぞ?」  ここしばらく見なかった、いとこの悲愴(ひそう)無精(ぶしょう)顔に、ロークワゴンは秘書から茶器を受け取りつつ真摯(しんし)に頷いた。
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